2018年06月25日
【格安SIMに対抗(?)しているキャリアのとある施策】
スマホというデバイスが世間一般に広まったことで、世の中はますます便利な時代へと進んでいっている。そのため、そんなスマホという存在に関連した企業やサービスが数多く誕生している現在の流れも当然といえよう。
スマホを誰もが使う時代になったことで、その利用料金をもっと削減するためのサービスが生まれた。それが、ここ数年の間に急激に注目を浴びるようになった「格安SIM」だ。
それまでスマホといえば、キャリア3社のいずれかで契約して利用する以外の選択肢はほぼ存在しなかった。そのため、どこか1社が料金を値下げすれば、ほかの2社も追随する形となり、結局どこで契約しても料金に差はほとんどないという状況が続いた。そんななか、キャリアとは比べものにならないほど、――それこそ半額や3分の1にだって月額料金を下げることができる、超お得なサービスとして登場したのが格安SIMだ。
その価格差の衝撃から、数年間でまたたく間に存在が広まった格安SIMに、現在進行系でキャリアから乗り換えようと思っている人は大勢いるだろう。しかし、キャリアとしては、ユーザー数がどんどん減っていく状況になってしまうのは、当然好ましくない。そこでユーザーが格安SIMに乗り換えにくくするために……というと「そんなことはない!」と各社からクレームを受けてしまうかもしれないが、はたから見るとそう捉えられても不思議ではない施策が、キャリアでは繰り広げられている。
本記事では、そんなキャリアの“とある制度”について、ご紹介していこう。
ある程度スマホ関連の情報などに詳しい人であればもうお気付きかもしれないが、ユーザーが乗り換えにくいようにしている……ように感じてしまうキャリアの施策とは、俗にいう「2年縛り」のことだ。
キャリアでスマホを契約する際、その契約には更新期間というものが設けられており、更新期間以外に乗り換えを含む契約変更を行おうとすると、違約金として約1万円もの金額を支払わされるということになっている。その更新期間が2年周期で訪れる、というプランを利用しているユーザーが一般的なため、キャリアでの契約は2年縛りと呼ばれている。
せっかく格安SIMという非常に魅力的な存在を知ったのにも関わらず、この2年縛りが続いているせいで、乗り換えをためらってしまうという人も多いように思う。実は、格安SIMに乗り換えれば毎月数千円ずつキャリアより出費を減らせるため、たとえ違約金を支払っても数カ月後にはもう違約金分のマイナスは取り返せるケースがほとんどなのだが、いざ違約金を支払わなければならないという状況になってしまった際、「じゃあいっか」と乗り換えをやめてしまった人もいるだろう。
こうした状況については、我々ユーザーだけではなく、国としても問題視している。
総務省はこれまで、6回にわたって「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を実施してきた。これはキャリアや格安SIMなどのモバイル市場において、特定の企業だけが有利にならないよう、公正な競争を促進させることを目的に、総務省が主体となって開催してきた検討会だ。
その中で、上記で述べたようなキャリアの2年縛りの問題点についても、ユーザーが格安SIMを含めたさまざまな選択肢から自由に選ぶ機会を奪っているのではないか、と取り上げられてきた。野田聖子総務大臣も「利用者に不測の費用負担を求めることになりかねない」という理由により、この検討会で「キャリアに対して行政指導を行う」と発言している。
だが、問題はこの2年縛りに留まらず、ここ最近新たな問題として指摘されているのが、キャリアの「4年縛り」だ。
言葉の意味はなんとなく伝わっていると思うが、4年縛りとはユーザーが4年間乗り換えにくくなるような施策のこと。2年縛りでも大きな負担となっているのに、さらに4年縛りとはどういうことなのか?
4年縛りとは、具体的にはauの「アップグレードプログラムEX」やソフトバンクの「半額サポート」といったサービスのことを指した言葉だ。これらのサービスはスマホを4年間の分割払いで購入できるというプランなのだが、ユーザーが購入から2年後に機種変更を行いつつ同じ4年契約のプランに再加入すると、分割で支払っていた機種代金のうち、まだ支払っていない残額が免除される。つまり、4年間の分割払いのうち2年間までしか支払わなくていいので、実質半額でスマホを購入できるということだ。
しかし、4年間の契約を結ぶことになるため、2年後に機種変更をしなくても残り2年間は契約が続き、その途中で乗り換えようとすると、2年縛りよりもさらに高額な違約金を支払わされる。また、2年後に機種変更して分割代金の残額を免除してもらうには、再び4年間の契約を結ばなければならないため、合計すると6年間も同じキャリアに縛り付けられることになる。
4年間という長期に渡って、スマホを安く買えることを条件にユーザーを囲い込むというこの施策は、独占禁止法に抵触しているのではないかともいわれており、そうしたところで総務省の検討会でも議題に上がっているのだ。
2年縛りや4年縛りといった施策について特に問題視されているのが、ユーザーに対するデメリットの周知が徹底できているのかどうか、という部分にある。
2年後に機種変更すると安くなるからと思って4年縛りで契約してしまったユーザーが途中で乗り換えようとすると、支払わなければならないなんてまったく思っていなかった違約金の支払いを求められるため、乗り換えにくくなるというデメリットがある、と総務省でも指摘されており、契約時にこうしたデメリットについて、しっかりとした説明を徹底すべきだと報告書にもまとめられている。
少し話は戻るが、2年縛りとここまでお伝えしてきた施策は、正確には「2年1カ月」あるいは「2年2カ月」での縛りとなっている。
2年縛りでの契約の場合、違約金を支払わなくていいとされている期間は2年が経過したあとの25カ月目~26カ月目とされており、25カ月目に解約した場合、その25カ月目の月額料金も支払わなければならない。
つまり、2年縛りといいつつ、実質はプラス1カ月分の料金を支払わなければならないため、ユーザーにとっては寝耳に水というわけだ。
こうした状況などが重なって、総務省の検討会では議論が繰り広げられてきたのだが、総務省は6月6日、キャリアの2年縛りを是正する行政指導を行った。今後の動向に注目していきたい。
さて、このようにキャリアで契約している最中に格安SIMに乗り換えたいと思っても、契約期間と違約金の問題により、ユーザーにとってはなかなか踏み出しにくい状況となっている。しかし、文中でも述べたように、違約金を支払っても、格安SIMに乗り換えれば数カ月後にはその分を取り戻すことが可能だ。
もちろん安さだけが契約の決め手ではないので、必ず格安SIMに乗り換えたほうがいいという話ではないが、縛り期間のせいで乗り換えを躊躇しているという人は、再度検討してみてはいかがだろうか。
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