2018年02月16日
【速度調査で1、2位を争うサブブランドの高水準の裏には優遇の噂が?】
ドコモ、au、ソフトバンクなどのキャリア(=MNO)から卸してもらった通信回線を用いて、格安SIMを提供する事業者のことを「MVNO」という。MNOが持っている回線の“一部”を借りて提供しているため、音声品質、とりわけ通信速度の面ではMNOより劣っているのが通例だ。
ところが、ソフトバンクとウィルコム沖縄が運営する「Y!mobile」と、auの運営会社・KDDIのグループ会社であるUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」の2つ――いわゆる「サブブランド※」の提供する格安SIMは、ほかのMVNOが提供する格安SIMよりも通信速度が速いとされている。実際に、MMD研究所が実施した「2017年2月格安SIM・格安スマホ通信速度調査」では、全日の中央値や、混雑しやすい昼の12~13時の平均値でUQ mobileが1位、Y!mobileが2位という結果が出ているのだ。
また、サブブランドはテレビCMや広告などでの露出が多く、店舗数も豊富。そのような宣伝や設備への投資は、到底ほかのMVNOでは実現できないであろう水準だという指摘もある。
こうした実情を受け、2017年12月25日より総務省主催で開催されている「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」(以下、検討会)では、その他のMVNOから、サブブランドはMNOに優遇されているのではないか、という懐疑の声が挙げられた。
たしかに、ユーザーとしては、通信速度が速いに越したことはないので、「通話する機会の多い人は通話サービスの充実したY!mobile」など、使い方に合わせてどちらかのサブブランドを選べばいいような気がする。しかし、その他のMVNOからすると、そんな高水準に何かからくりがあるのだとすれば、理由を知りたいと考えるのは当然だ。
果たしてサブブランドはMNOから特別扱いを受けているのだろうか? 検討会の議論をもとに、確認していこう。
※厳密にいうと、UQ mobileは「MNOのグループ会社であるMVNO」とされており、Y!mobileと立ち位置が異なるが、現状ではともにサブブランドの1つという認識が強いため、ここではサブブランドという扱いで進めていく
検討会は本記事の執筆時点で第4回まで終了しており、第1回では有識者として集まった構成員により、課題と検討の方向性を確認。続く第2回では、全75社中61社のMVNOが回答したアンケートを踏まえたうえで、「IIJmio」を運営するインターネットイニシアティブ(IIJ)、「楽天モバイル」を運営する楽天、「mineo」を運営するケイ・オプティコムの3社へのヒアリング。そして、第3回、第4回ではMNOの3社ならびにサブブランドへのヒアリングを実施している。
結論からいうと、MNOやサブブランド側は、その他のMVNOと違わない公平な扱いを主張しており、サブブランドが優遇されているという事実は確認されていない。
先述したとおりMVNOはMNOから回線を借りてサービスを提供している。借りるには当然費用(=接続料)が発生するわけだが、そもそも優遇するとはどういうことなのかというと、その接続料にサブブランドとその他のMVNOとで差を付ける、ということだ。
ただし、総務省は業界内競争の活性化を推奨しており、当然不平等な取り引きが行われないよう、データ通信に関しての接続料が「原価+適正な利潤」となるよう省令で規制している。
省令が守られているという前提で話を進めると、サブブランド以外のMVNOが不当に高額な接続料を支払わされているとは考えにくい。そこで、第2回会合でヒアリングに応じたMVNOからは、MNOが利潤を減らしてでもサブブランドへの接続料を安くしているのではないか、といった意見が挙げられた。
サブブランドの優遇というMVNOからの意見に対し、MNOやサブブランドは真っ向から反論している。
第3回会合において、接続料の不平等についてはKDDIが「接続料は、ルールに基づき算定し、MVNOに同条件で提供している」、ソフトバンクが「Y!mobile、MVNOが同条件で利用・コスト負担している」と述べており、UQコミュニケーションズからも「一定の通信速度を確保することが弊社のポリシー」と、接続料の問題ではなく企業努力により通信品質を保っている、という旨の主張がなされた。
第4回会合では、10社のMVNOから提出された「1ユーザーあたりの帯域幅」、つまりユーザー1人あたりに割り振られた電波に関するデータをもとに議論を続行。このデータは構成員とヒアリング対象の事業者のみに公開され、一般には非公開となっている。
ただし、事務局からの説明資料のなかに「UQ mobileの1ユーザーあたりの帯域幅は、ほかのMVNOに比べ約○倍」という記述があり、契約ユーザー数に対して、他社よりも多くの回線を借りていることが見て取れた。
ちなみに、検討会ではサブブランド以外にもいくつかの問題に焦点を当てているのだが、なかでも注目なのが「MNOによる2年縛り」だ。
2年縛りとは、MNOにおける定期契約プランの契約期間が基本的に2年であり、2カ月間の更新期間を逃すと再び2年契約が自動的に結ばれてしまうことを指す。契約期間中に解約しようとすると高額な解約金が発生してしまうため、更新期間を逃して泣く泣く再び2年間使い続けるユーザーも多い。
こうした制度の存在がMVNOへの乗り換えの妨げになっているとして、MVNO側から意見が挙げられた。
これに対し、MNOは「更新期間は従来の1カ月から2カ月に延長している」「更新期間前にはメールやSMSで十分な告知を行っている」とし、乗り換えの妨げになっているというMVNO側の意見を否定。また、そもそも定期契約プランを自動更新としている理由については「契約更新漏れの防止や、ユーザーの手間を省くため」としており、あくまでユーザーの利便性を考えた制度だという見解を示した。
加えて、最初の2年経過後は解約金のかからないプランも導入されており、まずはその効果を検証すべきだという主張もしている。
こうした双方の言い分があるなか、構成員からは「期間拘束の自動更新や解約時の料金など、ユーザーの乗り換えを阻害する要因は見直しが必要」「解約について説明を十分にしたから良い、ということでは必ずしもなく、制度的な対応が必要」とMVNO側に同調する意見のほか、「自動更新されないプランの提供や、更新月の通知を始めたばかりであり、これらの効果を検証すべき」とする意見も挙がった。
2年縛りによって、欲しい機種が発売されたタイミングで乗り換えられなかったり、なかなか時間が取れず更新期間を逃してしまったりする可能性もあり、ユーザー目線としては、自動更新はおろか最初の2年の契約期間すらも煩わしく感じてしまう。
MNOの主張もわかるが、今後もMVNOへ乗り換えたいユーザーが増えるであろうことを考えると、検討会で2年縛りのさらなる改善が実現してほしいものだ。
さて、ともあれ当然といえば当然だが、検討会のヒアリングでMNOやサブブランドから、優遇に関して事実だというような口述が出てくることは一切なく、第4回会合までが終了した。検討会は全6回の予定で、モバイル市場の公正競争について何かしらの方針が決定されることとなる。
今後は、サブブランドも含めたMVNO間の格差が解消される方向に向かっていくことが予想されるが、現状のサブブランドの通信速度はやはり魅力的。特にY!mobileは、格安SIMでは希少な、時間無制限の完全カケホーダイを提供している。キャリアでの契約のような、時間を気にしない通話スタイルに慣れているユーザーにとって、Y!mobileはストレスなく使いやすい、オススメの格安SIMだといえるだろう。
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