2017年12月25日
「キャリアより遅くならない」は嘘!
格安SIMの通信速度はキャリアより遅いんです!
毎月のスマホ代を安くできる存在として、脚光を浴びている格安SIMだが、その詳細については知らない人も多い。特にドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアから格安SIMに乗り換える場合、どのようなデメリットがあるのか把握しておかないと、後悔することになりかねない。
キャリアと比べた格安SIMのデメリットには、カスタマーサポートの手薄さ、キャリアのメールアドレスが使えなくなる、などいくつか挙げられるが、あまり触れられることが少ないのが通信速度だ。
「速度はキャリアと変わりません!」
このような宣伝をたまに目にすることがあるだろう。しかし、これは残念ながら正しくなく、はっきり言って格安SIMの速度はキャリアより遅い。ほかのデメリットは乗り換え前後のちょっとした手間で解決したり、特定の状況下でのみ気になったりするものだが、通信速度の問題は直接使い勝手に影響するので、気にしないわけにはいかない。
これまでキャリアでしかスマホを使ったことがない人にとってはあまりピンとこないかもしれないが、通信速度が遅いというのは実は非常に厄介だ。たとえば、Webサイトの閲覧時、新しいページを開くたびに10秒近くかかるとしたら?
ストリーミングサービスでの動画視聴時、データの読み込みで頻繁に動画が止まってしまうとしたら? 安定した速度で快適に通信できるキャリアと比べ、格安SIMは日常的にストレスを感じてしまう可能性を有している。
では、そもそも格安SIMの通信速度が遅いのはなぜなのか。それには、格安SIMというサービスの通信回線の仕組みが大きく関係している。
格安SIMの販売業者・MVNOは、実は自社の通信回線を持っておらず、キャリアから通信回線を卸してもらい(レンタルし)、それを格安SIMユーザーに向けて提供している。ただし、キャリアの回線を自由に使えるというわけではなく、レンタルしているのはその中の一部帯域のみなのだ。
一般的に、帯域が広いと回線を使うユーザーが増加しても安定した通信を行うことができ、反対に帯域が狭いと少しユーザーが増えるだけで通信速度が落ちる、とされている。どういうことかと言うと、帯域を道路に例えるなら、10車線ある道路(帯域)に車(ユーザー)が100台(人)同時に通っても混雑することはない。しかし、通る車が50台だけだったとしても2車線しかなかった場合、その道路は混雑してしまう。
つまり、キャリアは利用者が多い分、利用できる回線も広いため、常に安定した通信環境をユーザーに提供できる。一方、格安SIMはキャリアよりもユーザー数は少ないが帯域も狭いため、通信速度が遅くなりやすいというわけだ。
だったらMVNOも自社で通信回線を持てばいい……というわけにはいかず、通信設備の設置や維持、またそれを行う作業員の人件費なども必要となってくるため、格安SIMの最大のポイントである「安さ」を維持できなくなってしまう。
キャリアから卸してもらう帯域を広げるにしても同じで、やはり費用が発生した分だけサービスの料金も上がってしまうのでは意味がない。各MVNOはユーザーの負担を増やすことなく、どこまで通信環境を改善できるかに尽力しているのだ。
前述した通り、通信速度には回線の帯域の広さと、回線を利用するユーザー数が影響する。ここで重要なのが、ユーザー数とはその格安SIMの契約者数ではなく、同じ時間帯に通信を行っている人数だということ。ということは、当然利用者の多い時間帯とそうでない時間帯で、通信速度に違いが発生する。
基本的に、通勤・通学と重なる8時頃、お昼休みの12時頃、帰宅する17時頃から帰宅後の21時頃は利用者が集中する時間帯となっており、通信速度が出にくいことが多い。言い換えると、それ以外の時間帯では比較的、通信速度が速くなりやすい(キャリアと大きく変わらない)傾向にある。そのため、動画の視聴など速度を必要とする作業は、できるだけ時間帯を意識して行うといいだろう。
また、いくら同じ時間帯の利用者数に左右されるとは言っても、そもそも契約者数が多い格安SIMであれば、各時間帯の利用者数も当然多くなりやすい。ただし、MVNOごとに通信設備への力の入れ具合は異なるため、契約者数が多い=通信速度が遅いではないという点には言及しておきたい。
最近は格安SIMが広く認知されてきたことで、新しく業界に参入してきたMVNOも多い。そうした会社の格安SIMはサービス自体が新しいためユーザー数が少なく、通信速度が爆速であることも実は少なくない。
しかし、それはあくまで一時的なもの。今後人気が出てユーザー数が増えてくると、それに伴って通信速度が遅くなる可能性はある。もし新しく登場した格安SIMが速いという情報を見聞きしたとしても、うかつに契約してあとから痛い目にあわないように注意したい。
そしてもう一つ気を付けたいのが、速度の速さをうたった誇大広告だ。記憶に新しいのは2017年4月、大手格安SIMのFREETELに景品表示法違反で行政処分が下ったことだろう。この件が少なからず起因し、業績不振に陥ったFREETELは2017年9月、楽天により買収されることが発表された。
消費者庁の監視などもあり最近はあまり見かけなくなったが、このような何の根拠もなしに「通信速度ナンバーワン!」などのキャッチコピーを掲げる格安SIMもなかには存在する。そうした広告はただユーザーを集めるためだけの嘘や誇張の場合がある。
また、通信速度の検証結果を併せて掲載していたとしても、偽のデータではないにしても自社に有利になるように上手く調整している可能性もあり、そのままの情報をむやみに信じない方がいいだろう。
なお、通信設備への投資に力を入れているMVNOが、自信を持って通信速度の快適さを宣伝しているといったケースもあるので、すべてを信じてはいけない、というわけではないのが難しいところ。格安SIMはサービスや料金で選ぶのがスタンダードであり、それはそれで正しいが、MVNOの“信頼性”という観点から選択してみるのもいいだろう。では、MVNOの信頼性というのはどこから判断すればいいのだろうか。それは、格安SIMサービスの提供形態を理解することである程度見えてくる。次で詳しく説明しよう。
格安SIMを提供している会社のことをMVNOと呼ぶ、と紹介してきたが、厳密にはもう少し細かく区分けすることができる。
まずドコモ、au、ソフトバンクなどのキャリアのことを「MNO」という。MNOは「Mobile Network Operator(モバイル・ネットワーク・オペレーター)」の略で、自社でモバイル端末用の通信回線を所有している会社のことだ。このMNOの通信回線をレンタルしているのがMVNOなのだが、その間にもう一つ「MVNE」という事業者が存在する。
MVNEは「Mobile Virtual Network Enabler(モバイル・ヴァーチャル・ネットワーク・イネイブラー)」の略で、簡単に言うとMVNOをサポートする会社のこと。格安SIM事業を行いたいMVNOに代わってMNOと交渉したり、ノウハウの面で支援したりしている。
実はIIJmioを提供しているIIJや、OCN モバイル ONEを提供しているNTTコミュニケーションズなど、MVNEとMVNOを兼ねている会社も意外と多い。MVNOのサービスはMVNEの支援力による部分も大きく、自社でどちらも兼ねている会社であれば、それだけ通信事業者として安定したサービスを提供しやすい、信頼するに値する環境にあると言える。
自社内でやりくりできる分、通信トラブルなどへの対応速度も速いため、そういった意味ではMVNEも兼ねた会社の格安SIMを利用するというのも一つの手だろう。
また、2017年12月、楽天がMVNO事業と平行してMNO事業への参入を発表したニュースにも触れておきたい。
MVNOがMNO事業へ参入するということは、3大キャリアより安い新しいキャリアや、ほかの格安SIMより速度の安定した格安SIMといったサービスが実現する可能性もあり得る。楽天を皮切りに、今後ほかのMVNOによるMNO事業への参入が増えることを期待したい。
格安SIMの通信速度には、最大のメリットである安さと密接な関係があった。とは言え、快適にスマホを使うためには、通信速度を無視するわけにはいかないのもまた事実。通信設備の充実しているMVNOを見極めるのか、利用する時間帯を調整するのか、はたまた比較的新しくユーザー数の少ないサービスを狙って契約するのか。これが絶対に正解というものはないので、キャリアとの速度の違いを意識しながら、上手く格安SIMライフを楽しんでほしい。
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